女性活躍推進法で働き方を見直すきっかけに

みなさんは女性の活躍と聞いて何を思い浮かべますか?女性の活躍とひとえに言っても、多様な見解がありますよね。そこで今回は女性活躍推進法を取り上げながら、女性の活躍について紐解いていきたいと思います。

 

◆腰掛就職から生涯就職へ、女性のキャリア意識の変化

少し前まで女性の就職はいわゆる「腰掛」として見られることが多く、女性が総合職でバリバリ働いて、キャリアアップしていく(いわゆるバリキャリ)というのは少ない傾向にありました。しかし、昨今の女性の就活では、「きちんとした育休・産休制度が制度が整っているか」「有給消化率はどのくらいか」等の働き方を意識した「生涯働ける会社探し」の傾向があるように思えます。実際に会社側も女性を総合職として採用し、地方へ派遣したりと今までとは少し違う女性の働き方を視野にいれているような印象です。

 

◆性差ではなく、TPOによる適材適所

しかし日本では総合職は男性、事務職は女性という概念がまだまだぬぐえません。実際に体力や育児などのことを考えて、事務職を好む女性が多いのも事実です。では、果たして本当に男性は総合職に、女性は事務職に向いているのでしょうか?

以前、筆者の知り合いに普段はアポイントがとれない大物にさらっとアポイントを取った女性営業さんがいました。彼女は電話でアポイントを取ったのですが、それは通常男性営業マンは考えもしないことだったのです。彼女は「電話すればだれでも取れますよ」と上司に言いましたが、上司は「誰も彼にアポイントをとってみようと思わない。もしかしたら電話をすればとれるのかもしれないけど、そもそも誰もそれをしようと思わないでしょう」と言うのです。彼らはやる前からあきらめてしまっていたのです。そこが彼女とほかの男性営業マンとの違いでした。

人には向き不向きがあります。分かりやすい例でいえば生物学的な違いでしょう。一般的に女性はマルチタスク、男性はシングルタスクといわれています。多岐にわたる業務を同時にこなさなければいけない事務職では確かに女性のほうが優れているかもしれませんが、専門的な追求が必要な業務では男性のほうが優れているかもしれません。ですからこれは男性・女性という垣根を越えて、個人の向き不向きで考えていくべきだと思います。

 

◆女性活躍推進法は女性の力を社員みんなで引き出すための制度

さて、2016年4月に女性活躍推進法が制定されました。これは新卒採用に占める女性の割合が低いことや、第一子出産を期に半数以上の女性が離職してしまうことなどを背景に、厚生労働省が施行した制度です。名前からすると女性のための制度のようですが、実際には働き方の是正も指摘事項に入るので、男性も対象になっています。働き方の是正というのは、フレックス制度の導入や、労働時間から能率での評価への移行などが挙げられます。

 

◆働き方改革の実例

実際に女性活躍推進法の導入後、7割の女性社員が30歳前(出産や結婚のタイミング)に退職していた会社で働き方改革を行い、女性の離職者を3割まで減少させた会社があります。その会社は制度の導入前から子育てを支援していたのにも関わらず、長時間労働などが原因で女性が実際には子育てとの両立ができていなかったことを問題視し、有給取得の支援や残業時間の大幅削減によって女性社員の確保に成功しました。(参照

筆者はこれに加え、フレキシブルな働き方を導入すればより女性の離職者を1割以下まで減らせるのではないかと考えています。具体的には、フレックスタイムでの労働や、自宅勤務の許可です。

 

◆フレックスタイムと在宅勤務で活躍する母数を増やす

働き方というのはある程度の規律は必要ですが、その人それぞれにあった働き方というものがあります。言い換えればその人の能力を最大限に引き出す働き方です。一番わかりやすい例でいえばフレックスタイムの導入です。朝、保育園や幼稚園に子供を送ってから出勤できる人や、お迎えに行ける人が増え、その分働ける人が増えます。

次に、積極的に導入してほしい働き方が「在宅勤務」です。これができればフレックスタイムとは非にならない数の人が活躍できるようになります。例えばお子さんがいる家庭や、家族の介護をしている人だけではなく、病気などで会社に行けないけれど仕事はしたい人などが考えられます。

 

◆労働時間での評価から生産性での評価へ

さて、ここで問題点があります。在宅勤務でどのように人事評価をしていけば良いのでしょうか?それは「労働時間」での評価から「生産性」での評価に変えていくことです。

日本ではいまだに長い時間働いていれば(成績の悪い社員でも)この人は一生懸命仕事をしていると評価される風潮があります。でも単純に考えて1時間に10の仕事をする人と、8時間で5の仕事をする人、どちらが評価されるべきでしょうか?当然前者ですよね。会社としても長時間働かれれば働かれるほど残業代を支払わなければなりませんし、その人が会社にいる分の光熱費などもかかってしまいます。但し、ここで注意したいのは全員が1時間で10の仕事をできるわけではないということです。前述したとおり、人には向き不向きがありますので、個々人が自分の能力を最大限に発揮できるよう、チーム全体でサポートしていく環境が必要です。

 

◆変わるべきは働く女性の「まわり」

以前、知人がよく口にしていたのですが「マネージメントは指揮者で、社員は演奏者である」という言葉がわかりやすいと思います。どんなに優秀な奏者がいても、指揮者が指揮棒を捨て、突然バイオリンを弾き始めたら奏者たちは露頭に迷ってしまいます。優秀な人材を集めても、うまく使えなければ会社としては宝の持ち腐れになってしまいます。

女性自身も「こうしていきたい」を発信すること、周囲もそれをサポートし合う。そしてここで一番大切なのは企業自体がそれを受け入れ、推進していくことです。女性の活躍はただ女性が頑張ればどうにかなるものではありません。女性だけではなく男性も現状に向き合う必要があります。この制度の導入を機会に、会社のゴール、社員の目標、個々人の向き不向きなどについて話し合ってみてはいかがでしょうか?

 

女性活躍推進法の理解と活用法のヒント

  1. 女性活躍推進法は女性の力を社員みんなで引き出すための制度
  2. 社員それぞれのライフとワークを棚卸しして、共有する
  3. 上記を踏まえた適材適所の配置、評価の仕方を見直す

(文責:新井)


 

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