エンゲージメントを高める意味と4つの方法とは?


終身雇用や年功序列といった考えが過去のものとなり、副業の解禁やリモートワークなどによる働き方の多様化が進むなか、離職率の高さが問題視されています。優秀な人材の確保は、どの企業においても重要な課題でしょう。

人材の流動化を防ぐ大きな策として『エンゲージメント』があります。社員と企業が共に成長し合える理想的なカタチを作るには、一体どうしたら良いのでしょうか?



日本のエンゲージメントスコアはワースト7位


「社員の会社に対する愛着心」を測定したエンゲージメントスコアですが、米ギャラップ社の調査(2017年)によると、日本は139カ国中132位という結果となっています。「熱意あふれる社員の割合」も6%と低い数値です。

「9割の企業がエンゲージメントが重要だと考えている(日本の人事部 人事白書2019)」というデータがあるにも関わらず、世界最下位という実態。ただ、見方を変えればエンゲージメントを高めることで、他企業との差別化を図れるということなのです。



エンゲージメントを高めるメリットとは?


経済産業省が出している資料によると「民間企業と大学による国内企業を対象にした調査において、従業員エンゲージメントスコアと営業利益率、労働生産性の間に相関関係が確認された」とあります。具体的には、次のような効果があるとされています。

①組織の活性化 55.5%
②社員のモチベーションの向上 43.8%
③業績の向上 39.8%
④離職率の低下 37.5%
⑤組織内での情報共有の強化 31.3%

日本の人事部 人事白書2019より



エンゲージメントを高める4つの方法


それでは具体的に、エンゲージメントを高めるにはどうしたらいいのでしょうか?主なポイントを4つ挙げましょう。

①企業理念の共有&浸透
②人事評価制度の見直し&改善
③社員を育成する環境をつくる
④社内コミュニケーションを円滑にする


①企業理念の共有&浸透

まずは社員に対して、企業理念やビジョンを浸透させる必要があります。具体的には、定期的な研修会や日々のミーティングなどで伝える、1on1ミーティングを通して一人ひとりの価値観とすり合わせていくなどの方法が有効です。

②人事評価制度の見直し&改善

自分の頑張りが正当に評価されているかどうかは、社員のモチベーション維持のために欠かせません。評価基準を明確にし、それに即した公正な評価を行うことが求められます。

人事評価制度が整っている会社では、仕事に対してやりがいを感じると共に、企業理念への理解が深まったという実績があります。


③社員を育成する環境をつくる

社員が会社に求めることの一つとして、「自己成長」があります。そのためには、スキルアップの支援やキャリアアップに向けたキャリアパスを示すことが重要となります。

実際に、能力や適性に合わせた研修制度が整っていると、会社への貢献を通して自己成長を目指そうとする人材が増えるという事例がたくさんありました。


④社内コミュニケーションを円滑にする

退職理由に「人間関係」を挙げる方は多いです。上司と部下、同僚とのコミュニケーションが円滑な企業は離職率が低いと言われています。

悩みや疑問を相談できたり、意見交換をし合える環境づくりのための具体的な方法としては、1on1ミーティングやメンター制度の導入、社内コミュニケーションツールの利用などが挙げられます。ランチやイベントなどで交流を図るのも有効です。



おわりに


人材不足や離職率の高さが問題視される現代において、社員と会社が一体となり、互いに成長し合える関係を築くことは、どの企業においても重要課題だと言えるでしょう。

ここで挙げた「4つの方法」を実践している企業では、「会社への貢献を通して自己成長を図りたい」と話す社員の方が多いです。

エンゲージメント向上を重要視している一方、日本におけるエンゲージメントスコアは低いという現状があります。他社との差別化において、これをチャンスと捉え、できることから実践されてみてください。

なぜ高い?新入社員の離職率~大きな損失になる前にできること3選



若者の離職率は?

どの企業においても、優秀な人材に長く働いて欲しいと願うのは当然のこと。ところが実際は、入社後間もない若者の離職率の高さが問題になっているのです。厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によると、入社して3年以内で6~7人に1人が辞めているという調査結果があります。


業種別の離職率をみてみると?

離職率を業種別にみてみると、次のようになっています。

〇1位 25.6%
宿泊業・飲食サービス業
〇2位 22.3%
生活関連サービス業・娯楽業
〇3位 18.7%
サービス業
〇4位 15.4%
教育・学習支援業
〇5位 13.5%
医療・福祉




離職率が高くなると?

企業にとっては次のような問題が生じます。

①新たな人材を探さなければならない
②残された従業員の負担が増える
③企業イメージがダウンする


①新たな人材を探さなければならない

労働人口が減少している昨今。採用と人材育成はどの企業においても相当な労力を要します。コストと時間をかけて採用し、教育をしたにも関わらず簡単に辞めてしまわれては、大きな損失となります。


②残された従業員の負担が増える

退職者が出た場合、空いた穴を埋めるのは残された従業員です。必然的に負担が増し、仕事へのモチベーションが下がります。かといってすぐに後任者を採用することは難しく、長引けば長引くほど不満が募り、さらに離職者が増え、負の連鎖につながってしまうのです。


離職率が高くなると企業イメージがダウンする

高い離職率は、クライアントや求職者にとって悪い印象を与えかねません。例えばSNSによる情報拡散。アンチコメントや悪い噂を流されてしまうことで、新規採用が難しくなったり、企業イメージがダウンしたりして信用を失うこともあります。




新卒者が会社を辞めた理由をみてみると、次のようになっています。

1位 30.3%
労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった
2位 26.9%
人間関係がよくなかった
3位 23.4% 
賃金の条件がよくなかった
4位 20.1%
仕事が自分に合わない

厚生労働省「平成30年若年者雇用実態調査の概況」より




一般的に、離職率が平均で20%を超えると注意が必要だと言われています。新入社員にとっても、1年未満で離職すると6割以上が正社員としての再就職が難しいというデータがあります。双方にとってデメリットしかありません。

離職率を低い数字に抑えるためにはどうしたらいいのでしょうか?結論から申し上げますと、まずは相手を知ることではないでしょうか。企業側と従業員とのギャップを埋めることが大切です。退職理由をふまえて、企業として効果的な対策は次の3点です。

①現状に即した労働条件を提示する
②コミュニケーションがとりやすい職場作り
③研修制度を整えてエンゲージメントを高める


①離職率を下げるには、現状に即した労働条件を提示する

新卒社員が退職してしまう大きな理由は、採用条件や仕事内容において、本人の希望と現状が合わないこと。そもそも労働条件は、採用時に合意のうえ約束されているはずです。ところが入社後に給与や福利厚生に不満を抱いたり、厳しいノルマや残業の多さに精神的・肉体的についていけなかったりして、「話が違う」と不満をもつ若者が多いと言われています。

採用時に現状に即した労働条件を提示すること。説明や話し合いを通して具体的なすり合わせを行い、誤解を避けることが必須です。


②コミュニケーションがとりやすい職場作り

社会経験がない若者にとって、社会に出るということは今までの価値観をガラリと変える必要があります。新しい環境で覚えることがたくさんあり、失敗することや叱られることも出てくるでしょう。自分の努力が正当に評価されていないという理由でモチベーションを失うケースもあります。

ちょっとしたことでストレスを抱える可能性が高いです。一人ひとりが抱える悩みや疑問をサポートできるシステム作りや日頃から本音を話せる仕組み作りは必要不可欠です。


③研修制度を整えてエンゲージメントを高める

自らの生き方をみつめ、目標をもち、働く意欲につなげている…そのような教育が充実している企業では、圧倒的に離職率が低いです。研修を通してエンゲージメントを高め、「この会社で働きたい!」「この会社で自己実現したい!」という意識を育て、モチベーションにつなげているからです。一人ひとりのやる気が高まると、当然社内の雰囲気、人間関係も良くなります。




大きく問題になっている離職率ですが、見方を変えると、他社との差別化をはかるチャンスとも捉えることができます。

ミスマッチを防ぐためには、人事担当者と新入社員におけるコミュニケーションが大切です。最大の秘訣は、社員の価値観を大切にすることです。人材が人財となることは、企業にとってメリットしかありません。