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組織の「停滞」を突破するOSのアップデート 〜『プラダを着た悪魔』続編に学ぶ、伴走型リーダーシップ〜

「トップダウン」の限界。日本企業に必要な伴走型リーダーシップ

映画『プラダを着た悪魔』の続編が大きな話題となりました。前作は、ジャーナリストを夢見る主人公アンディが、ファッションに全く興味がないまま、一流ファッション誌の鬼編集長ミランダのアシスタントとして採用される物語です。カリスマ編集長が突きつける無理難題に翻弄されながらも、プロとしての洗礼を受け、劇的な変身と成長を遂げていく姿が描かれました。

前作から約20年。ファッション業界も働き方改革やデジタル化の波の中で、大きく姿を変えています。そうした変化は、作品の中にも色濃く反映されていました。圧倒的なカリスマを持つトップダウン型リーダーの象徴だったミランダも、最新作ではデジタル化への移行や周囲からの圧力により、そのスタイルに変容を迫られる様子が描かれています。

この変化は、決して映画の中だけの話ではありません。

現実のビジネス社会においても、ハラスメント防止への取り組みはかつてないほど強化されました。しかし一方で、現場のリーダーたちはパワハラのリスクに怯え、部下を適切に指導したり注意したりすることに躊躇し、自分を守るために「何も言わない」という選択をするようになっています。

表面的なコンプライアンスは整いました。しかし、その裏側で失われつつあるのが、「人と人との本質的な関わり」です。

部下に関心を持たず、必要なフィードバックさえ避ける組織では、人は育ちません。

米国の調査会社Gallup(ギャラップ)によると、日本で仕事に熱意を持って働く社員はわずか7%と世界最低水準で、その経済損失は年間約80兆円にものぼると推計されています(※1)。とりわけ若い世代では、自身の成長や働く意味を重視するからこそ、それが今の組織では叶わないと見限った瞬間に心理的な距離を置き、最低限の業務しかこなさなくなる「静かな退職(Quiet Quitting)」が世界的な課題となっています。その結果、挑戦する人ほど職場から離れ、組織の活力が失われていきます。

※1「ギャラップ・ジャパンと英国経営者協会(IoD)の共同調査レポート『変革への挑戦:日本の職場の新しい姿』(2025年)」より

「この会社では成長できない」成長意欲の高い若手が組織を見限る瞬間

組織のアップデートを阻んでいる大きな要因の一つに、経営層に見られる「感覚のズレ」が挙げられます。役員や管理職が昭和の成功体験や価値観を引きずったまま、古い体質を変えられずにいる企業は、もはや「経営陣が退陣するのを待つしかない」という袋小路に陥っています。

それは、圧倒的なカリスマで周囲を率いながらも、変化への対応を迫られる以前

のミランダの姿にも重なります。

こうした組織では、アップデートの必要性は感じつつも、実際に「今までのやり方を変えること」への強い抵抗感があります。特に「俺の背中を見て育て」といった精神論がいまだに根強く、経営層自身が研修を受けて自らのOSを更新することを嫌う傾向があります。

最新の情報に触れ、自律的な成長を求める若手社員にとって、この光景は決定的な失望を招きます。追いかけたい先輩や、プロとしての指針となるロールモデルがいない職場では、「ここでは自分をアップデートできない」という残酷な現実に直面せざるを得ません。

多くの場合、彼らは大きな不満を表に出すことなく、ただ静かに自らの可能性を広げてくれる別の場所へと去っていくのです。

理想のリーダーは、実はミランダではなく、右腕的存在のナイジェル

現場のリーダーもまた、深刻な課題を抱えています。上層部からの指示を自らの言葉で伝え直すことなく、単なる伝達役に終始してはいないでしょうか。仕事の意義を自分の言葉で語らず、形式的な指示を機械的に繰り返すだけでは、部下の心は離れるばかりです。

現代に求められるのは、命令するリーダーではなく、成長を支援するリーダーです。その象徴が、『プラダを着た悪魔』でミランダの右腕だったナイジェルです。ナイジェルの素晴らしさは、単に部下に寄り添うだけではない点にあります。彼はプロとして、時には「甘えるな」と非常に厳しい言葉をストレートに伝えます。しかし、決して突き放すことはしません。厳しい言葉と同時に、アンディがプロとして戦うための具体的な支援を惜しまず、相手が内発的に変わっていけるよう導きました。

20年後の続編においても、彼はプロとしての芯を一切ブレさせません。この「妥協なき厳しさ」と「手厚い実行支援」の同時提供こそが、今のZ世代が求めている、自分を本気で伸ばしてくれるリーダーの姿ではないでしょうか。

他者の視点を知り、「失敗を勲章」にする文化を作る

こうした部下の内発的な成長を促す「ナイジェル型」の伴走を組織で実践するには、単なる知識の伝達ではなく、社員一人ひとりが自らの基準を言葉にする場が欠かせません。

サナクリエイティブの研修では、マニュアルを教え込むインプット型ではなく、自ら考え言語化する「アウトプット型」への転換を重視し、実践しています。

そのために、研修の中では多数のグループワークを取り入れています。

仲間と対話を重ねる中で、社員たちは重要な事実に気づかされます。例えば「自分がされて嫌なこと」を出し合うワークでは、「自分には平気な言葉でも、10人に1人は深く傷つく」という他者の痛みに直面します。読書が他者の人生を疑似体験させるように、研修での対話を通じて「自分以外を基準にする想像力」を養います。

組織を変えるのは制度ではなく、人と人との関係性です。経営層から現場のリーダーまでが「人を大切にする」という旗を掲げ、本質的な対話と伴走を積み重ねていくこと。それこそが、新しい時代に選ばれる組織OSへのアップデートではないでしょうか。

(文責 永野さち子)

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