「我慢しない世代」と、止まらない早期離職のリアル
現在、多くの企業が深刻な離職率の高さに直面しています。厚生労働省の調査によると、入社3年以内に6~7人に1人の新入社員が退職しているという結果が出ています。かつては「石の上にも三年」と言われましたが、現在は空前の売り手市場です。若手社員にとって、今の環境が合わないと感じれば、我慢する必要はなく、退職代行を利用してでも去ることが一般的になっています。
そして近年の若年層は、働きやすさだけでなく、自身の目的や成長の機会を重視してキャリアを選ぶ傾向が強まっています。
調査会社ギャラップのレポートによると、
「労働条件を改善しただけでは、従業員のエンゲージメントはほぼ変わらなかったが、『やりがいのある仕事』に注力したところ、従業員の意欲が大きく向上した」と報告されています。
※参考サイト
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000169270.html
企業が残業削減や福利厚生の充実などに取り組むのはウェルビーイング向上のために重要ですが、従業員満足度と従業員エンゲージメントは別物です。
従業員満足度とは、会社が与える条件に対し、従業員がどれだけ満足しているかを示す指標です。一方従業員エンゲージメントは、会社と従業員が同じ目的に向かい、成長していく関係性を基にした指標です。
若年層の早期離職を食い止めるためには、やりがいのある仕事を任せ、従業員エンゲージメントを高めることが鍵になります。
心理的安全性が確保されてこそ、若手は挑戦し成長しようとする
若手社員にやりがいのある仕事を任せ、成長の機会を提供する際に最も注意すべきことは、「心理的安全性」を確保することです。それがなければ、いくら挑戦の機会を与えても、心が折れてしまい、結果として離職やモチベーション低下につながります。
心理的安全性は、単に「気軽に話せる」「飲み会が多い」といった表面的な仲の良さではありません。本質は、「誰もが個人として尊重され、自分の意見が言え、新しい挑戦を応援してもらえる」という安心感です。
特に重要なのが、失敗を許容する風土です。ミスを頭ごなしに否定する文化は、自分を守るためのウソや隠蔽を生む温床になります。一方で、失敗を成長の一部として捉え、本音で議論できる職場は、若手に「ここでなら成長できる」という確信を与え、生産性向上にもつながります。
指導を「本音を引き出すファシリテーション」へ変える3つの柱
この風土を作る中心人物が中間管理職ですが、パワハラを恐れるあまり部下に注意せず距離を置く「言わない選択」をする上司が増えています。しかし、これは部下の成長機会を奪う行為です。リーダーには、一方的な指導ではなく、部下の気づきを引き出すための以下の3つの技術が求められます。
① 否定から入らない(承認)
部下の発言や行動に対し、まずはその意図を認め、受容することから始めます。頭ごなしの否定を避けることで、部下が本音を話せる心理的な土台を築きます。
② 傾聴する(共感)
単に言葉を聞くのではなく、相手がどのような価値観を持って仕事に向き合っているのかを深く聴き取ります。相手に関心を持つことで、世代間ギャップを越えた信頼関係を構築します。
③ 質問で気づきを促す(内省)
仕事につまずいた時やミスが起きた際に、一方的に責めたり叱ったりするのは避けたい対応です。まずは「どうしてこう考えたの?」「どうすればミスが防げたと思う?」と問いかけ、本人に自己内省を促します。部下自らが考え、気づきを得るプロセスこそが、精神的な自律を促します。
企業の顔として社員が輝く〜生き残るための「本質的な土台作り」
サナクリエイティブではリーダーのファシリテーション力を高めるため、主に中間管理職を対象とした約6ヶ月間の長期研修を提供しています。単なる座学はすぐに忘れ去られますが、私たちは徹底した実践(ロールプレイング)を軸にしています。研修では、「聞く役」「話す役」「観察する役」の立場を入れ替えながら何度も繰り返します。他者の視点を疑似体験することで、部下の心理を構造的に理解し、現場でのコミュニケーションの質を劇的に高めることができます。
とは言え、何より重要なことは、最終的に組織が変わるかどうかは経営層の覚悟にかかっているということです。経営者が「どんな会社にしたいか」というビジョン(旗)を明確に定め、社員に伝え続ける粘り強さが必要です。
「人を大切にできない会社は伸びない」これは歴史が証明しています。逆に、社員を尊重し、失敗を恐れず発言できる土壌を整えれば、社員は自律的に成長し、新しい価値を生み出してくれます。社員一人ひとりが企業の顔として輝ける本質的な土台作りこそが、これからの時代に選ばれ続ける企業への道なのです。
(文責 永野さち子)





